結局、スウィングダンスとは何なのか

「同じスウィングダンス」と呼ばれていても、実際にはかなり性格の違うダンスです。
もし初めてスウィングダンスを理解するなら、まず見るべき項目は次の7つです。

項目差が大きい種目
音楽ウエストコーストだけかなり異なる
距離感バルボアとリンディホップが対照的
上下動シャグが突出
踊る大きさリンディホップが大きく、バルボアは小さい
即興性ウエストコーストとブルースが高い
体力シャグが突出
雰囲気リンディホップ=楽しい、
ウエストコースト=洗練、
ブルース=落ち着き

この7項目を見るだけでも、「同じスウィングダンス」と呼ばれていても、実際にはかなり性格の違うダンス群であることが分かります。特に差が大きいのは、

項目最も多い
フィガー数ウエストコースト、リンディホップ
フォロワー自由度ウエストコースト、ブルース
体力シャグ
世界人口リンディホップ
日本人口リンディホップ
音楽の自由度ウエストコースト
ジャズ色の強さバルボア、リンディホップ

というあたりです。

また、「フィガー数」については少し注意が必要です。
例えばウエストコーストは、実際には覚えるフィガー数が特別多いというより、
少数の基本パターンを無数に変形して踊る文化 です。
一方、リンディホップは、歴史的に残っている定番フィガーそのものが多い 傾向があります。
そのため、

  • フィガーをたくさん覚えたい → リンディホップ
  • 少ないパターンから無限に遊びたい → ウエストコースト

という違いがあります。
これだけ種類の多い、スイングダンス。このダンスはどこから来て、何を変えて、どんな文化になったのでしょうか?

スウィング系ダンス進化表

種目時代主なルーツ踊り方の特徴リンディホップから見た変化生まれた背景主な文化後世への影響
チャールストン1920年代ジャズダンス、ラグタイムソロ・ペア両方、足を大きく振るリンディホップ以前ジャズ時代の若者文化ナイトクラブ、ジャズ文化リンディホップ、シャグ
リンディホップ1930年代チャールストン、ブレイクアウェイ弾む、近づく・離れる、大きく動く基準スウィングジャズ全盛期ソーシャルダンス文化イーストコースト、ウエストコースト、ジッターバグ、ジャイブなど多数
バルボア1930年代スウィング文化近距離で歩くように踊る動きを極端に小さくした混雑したダンスホールジャズ愛好家文化現代バルボア
コレジエイトシャグ1930年代チャールストン、初期ジャズダンス常に跳ね続ける上下動を強調した若者向けの流行ダンス学生文化現代シャグ
ジッターバグ1930〜40年代リンディホップ派手で元気なスウィング全般一般向けに広まった名称大衆化エンターテインメント文化ジャイブ、ロックンロール
イーストコーストスイング1940年代リンディホップシンプルな6カウント中心簡略化した教えやすくするためダンス教室文化ジルバ系レッスン文化
ジルバ1950年代以降イーストコースト、ジッターバグシンプルな回転中心さらに簡略化初心者向け普及日本の社交ダンス教室文化日本独自のスウィング入口
ジャイブ1940〜50年代ジッターバグ、リンディホップキックとトリプルステップ競技向けに整理競技ダンス化ボールルーム競技文化現代競技ジャイブ
ロックンロールダンス1950年代ジッターバグ派手なキックやアクロバットショー性を強化ロック音楽流行ショー・大会文化アクロバティックロックンロール
ブギウギ1950年代リンディホップ、ジッターバグ軽快なフットワークヨーロッパ流に発展欧州での普及競技・フェス文化現代ブギウギ
ウエストコーストスイング1950年代〜リンディホップ直線上で滑るように踊る弾みを減らし即興性を増やした西海岸のダンスホール文化即興・ソーシャル文化現代WCSコミュニティ
ブルースダンス並行発展ブルース文化自由な表現、近距離も多いスウィングとは別系統ブルース音楽文化音楽表現文化現代ブルース

この表の要点を以下に示すと、

進化の方向種目
元祖スウィングチャールストン → リンディホップ
小さく踊る方向バルボア
跳ねる方向シャグ
教えやすくする方向イーストコースト → ジルバ
競技化する方向ジャイブ、ブギウギ
ショー化する方向ロックンロール
現代音楽対応ウエストコースト
音楽表現重視ブルース

と、整理されます。
とはいえ、違いが分かりにくいですよね。なので、一気に一覧にしてみました。

代表的なスウィングダンス比較表

項目リンディホップイーストコーストスイングウエストコーストスイングバルボアコレジエイトシャグブルースダンス
一言でいうとスウィングの王道入門向けスウィング現代型スウィングジャズ職人体育会系スウィング感情表現型
何を楽しむかスウィング感と躍動感気軽なペアダンス相手との即興的な会話ジャズのリズムの細部勢いと楽しさ音楽と感情の共有
踊り方の特徴離れる⇔近づくを繰り返しながら大きく踊るシンプルな回転やターンが中心直線上を往復しながら相手と駆け引きする近い距離で小さく歩き続ける常に弾みながら踊る曲に合わせて自由に表現する
見た目ダイナミックで華やか軽快で親しみやすいクールで洗練されている落ち着いていて渋い元気で活発静かで大人っぽい
初見の印象「これぞスウィング」「ジルバっぽい」「おしゃれ」「全然離れない」「ずっと跳ねている」「ゆったりしている」
主な音楽スウィングジャズ、ビッグバンドスウィング、ロックンロールポップス、R&B、ソウル、現代音楽スウィングジャズジャズブルース
音楽の印象映画やショーで流れる楽しいジャズ軽快でノリの良い音楽最近の洋楽古き良きジャズ元気なジャズ深夜のバーのような音楽
テンポ感普通〜速い普通遅い〜普通速い速い遅い
基本カウント8カウント中心6カウント中心6・8カウント混在8カウント中心6カウント中心特になし
基本ステップスイングアウト6カウントベーシックシュガープッシュアウト&インシャグベーシック特定の基本なし
姿勢やや前傾比較的直立直立に近いやや前傾前傾気味スタイルによる
重心やや前中央中央自由
上下動多いややある少ない少ない非常に多い少ない
距離感大きく変化中程度大きく変化かなり近い近い近い
オープンポジション非常に多い多い非常に多い少ない中程度少ない
クローズドポジション多い多い少ない非常に多い多い多い
移動の特徴円運動が多い円運動が多い直線運動が多いその場〜小移動小移動自由
フロア占有面積大きい中程度中程度小さい小さい〜中程度小さい
フィガーの数非常に多い多い非常に多い多い中程度少ない
バリエーション非常に豊富豊富非常に豊富豊富中程度表現面で豊富
フォロワー自由度高い中程度非常に高い中程度中程度非常に高い
即興性高い中程度非常に高い高い中程度非常に高い
音楽表現高い中程度非常に高い非常に高い中程度非常に高い
リードの特徴弾力を利用して動かす明確に方向を示す提案して選ばせる傾向小さな情報を伝える明確に動かすスタイルによる
体力消費高い中程度中程度中程度非常に高い低い
運動量高い中程度中程度中程度非常に高い低い
入門難易度高い低い高い高い高い中程度
上達難易度非常に高い中程度非常に高い非常に高い高い高い
世界での普及度非常に高い中程度高い中程度やや少ないやや少ない
日本での普及度最も多い少ない少ない中程度非常に少ない非常に少ない
向いている人ジャズも踊りも両方楽しみたい人気軽に始めたい人即興やリードフォローが好きな人ジャズ好き、職人気質な人運動好きな人音楽表現を楽しみたい人
初心者が見た印象「これぞスウィング」「ジルバっぽい」「おしゃれ」「全然離れない」「ずっと跳ねている」「ゆったりしている」

余計わかりにくくなってしまいました。

スウィングダンスという言葉を聞くと、多くの人は「リンディホップ」「ジルバ」「ウエストコーストスイング」など、個別のダンスを思い浮かべます。しかし調べれば調べるほど、「結局何がスウィングダンスなの?」と分からなくなる人も少なくありません。

実際、スウィングダンスは1つのダンスではありません。
スウィングダンスとは、1930年代前後のアメリカで流行したスウィングジャズを背景に発展したペアダンスの総称です。
つまり、ワルツやタンゴのような単独の種目名ではなく、「スウィングファミリー」と呼べるダンスの一族なのです。

スウィングダンスにはたくさんの種類がある

代表的なものだけでも、

  • リンディホップ
  • イーストコーストスイング
  • ウエストコーストスイング
  • バルボア
  • コレジエイトシャグ
  • ブルースダンス

などがあります。
見た目はかなり違います。

リンディホップは大きく動き、シャグは跳ね続け、バルボアはほとんど離れず、ウエストコーストスイングは滑るように踊ります。
初心者から見ると、別のダンスにしか見えないこともあります。
それでも、踊っている人たちはこれらを同じスウィングファミリーとして捉えています。
なぜでしょうか。

共通しているのは「ステップ」ではない

スウィングダンスを説明するとき、

  • 6カウント
  • 8カウント
  • トリプルステップ

などの話がよく出てきます。
しかし、それだけでは本質を説明できません。
なぜなら、リンディホップとウエストコーストスイングではカウントの使い方が違います。
バルボアでは足形もかなり違います。
ブルースダンスに至っては、決まった足形がほとんどありません。

それでも同じコミュニティで踊られています。
つまり、共通点はステップではないのです。

共通しているのは「音楽との付き合い方」

スウィングダンスの中心にあるのは音楽です。
振付を再現することよりも、
「今流れている音楽をどう表現するか」
が重視されます。

同じ曲でも踊るたびに違う踊りになる。
同じ相手と踊っても毎回違う踊りになる。
これがスウィングダンスの大きな特徴です。

だからスウィングダンスでは、「正しい答え」よりも、「音楽に合っているか」が重視されます。

共通しているのは「会話」

スウィングダンスはリード&フォローのダンスです。
しかし、リーダーが命令し、フォロワーが従うだけではありません。
理想的には会話です。

リーダーが提案する。
フォロワーが反応する。
その反応を受けてリーダーがまた提案する。
この繰り返しによって踊りが作られます。
特にリンディホップやウエストコーストスイングでは、この考え方が強く見られます。

共通しているのは「歩くこと」

初心者は派手なターンや技に目を奪われます。
しかし上級者ほど、「歩く」ことを大切にします。
スウィングダンスの多くは、歩行をベースにしています。

歩く。
リズムに合わせる。
相手とつながる。

そこから回転や表現が生まれます。
複雑な足形が本質ではありません。

なぜたくさんの種類に分かれたのか

スウィングダンスは時代や環境に合わせて変化しました。
混雑したダンスホールでは小さく踊る必要がありました。
その結果、バルボアが発展しました。
若者たちはもっと元気に踊りたくなり、シャグが流行しました。
教室では教えやすさが求められ、イーストコーストスイングやジルバが広まりました。
競技化が進むとジャイブやブギウギが発展しました。
現代音楽に合わせたい人たちはウエストコーストスイングを進化させました。
つまり、違いはあっても、どれも同じ根っこから育った枝なのです。

結局、スウィングダンスとは

スウィングダンスとは、
音楽に合わせて、相手と会話しながら、即興で踊るペアダンス文化
です。

リンディホップでも。
バルボアでも。
シャグでも。
ウエストコーストスイングでも。

形は違います。
使う音楽も違います。
足形も違います。

しかし、

  • 音楽を楽しむ
  • 相手とのやり取りを楽しむ
  • その場で踊りを作る

という考え方は共通しています。

だからスウィングダンスを理解する近道は、「この種目は何カウントか」を覚えることではありません。
そのダンスが、音楽とパートナーをどう楽しもうとしているのかを見ること。
そこに、スウィングダンスの共通した魅力があります。