「なんちゃってダンス」は本当に悪いことなのか?

ペアダンスの世界では、ときどきこんな声を聞きます。
「ちゃんと習っていないのに踊るのはよくない」
「正しいステップを覚えてから参加するべきだ」
「なんちゃってダンスでは相手に失礼だ」
確かに、競技ダンスや技術向上を目的とするなら、正しい知識や技術を学ぶことは大切です。
しかし、ソーシャルダンスという視点で考えたとき、「なんちゃってダンス」は本当に悪いことなのでしょうか。
私は必ずしもそうは思いません。

海外では「習っていない人」が普通に踊る

サルサやバチャータが盛んな国では、ダンス教室に通ったことがない人が普通に踊っています。
家族の集まりや地域のお祭り、友人同士のパーティーなどで、子どもの頃から自然と音楽に触れ、見よう見まねで踊る文化があります。
もちろん上手な人もいます。しかし全員がレッスンを受けているわけではありません。
「踊りたいから踊る」
それが先にあり、必要に応じて後から技術を学ぶ人もいます。
ダンスは生活や文化の一部なのです。

日本人にとって分かりやすい例は盆踊り

日本人に置き換えて考えると分かりやすいかもしれません。
盆踊りに参加するとき、多くの人は事前に教室へ通いません。
地域のお祭りに行き、周りを見ながら踊り、分からなければ真似をして、少しずつ覚えていきます。
誰も、「正式な講習を受けていないから踊ってはいけない」とは言いません。
むしろ、「まずは輪の中に入ってみよう」という雰囲気があります。
ソーシャルダンスも本来はこれに近いものではないでしょうか。

「参加できること」が最大の価値

初心者がダンスを始めるとき、一番高い壁は技術ではありません。
参加する勇気です。

  • ステップを覚えていない
  • 間違えたらどうしよう
  • 上手な人ばかりだったらどうしよう

そんな不安から、パーティーやイベントへの参加を諦めてしまう人もいます。
しかし、なんちゃってダンスを認める文化があれば、「とりあえず参加してみよう」と思える人が増えます。
参加者が増えれば、コミュニティも活性化します。
新しい友人もできます。
そして結果的にダンス人口も増えていきます。

実は上達への近道でもある

意外かもしれませんが、踊れるようになる近道は「踊ること」です。
レッスンだけでは身につかないものがあります。

  • 人によるリードの違い
  • 人によるフォローの違い
  • フロアでのマナー
  • 音楽との付き合い方
  • 相手とのコミュニケーション

これらは実際にソーシャルで踊らなければ学べません。
完璧になってから参加するのではなく、参加しながら上達していく。
その方が自然な成長につながります。

技術より大切なもの

ソーシャルダンスで本当に大切なのは、正確なステップではなく、音楽を楽しむこと。
相手を尊重すること。
そして一緒に楽しい時間を過ごすことです。
多少ステップが違っていても、相手への配慮があり、音楽を感じながら踊っている人は魅力的です。

反対に、技術は高くても、相手を無視して自分だけが踊っている人は、必ずしも良いダンサーとは言えません。

「なんちゃって」から始まる文化

もちろん、技術を学ぶことには大きな価値があります。
しかし、その入口に高いハードルを設ける必要はありません。
まずは音楽を楽しむ。まずは踊ってみる。まずは輪の中に入ってみる。
その先で興味が湧いたら学べばいい。
盆踊りがそうであるように、ソーシャルダンスもまた、「参加すること」から始まる文化であってよいのではないでしょうか。

まとめ

「なんちゃってダンス」は決して悪いものではありません。
むしろ、

  • 初心者が参加しやすくなる
  • コミュニティが広がる
  • 実践経験が増える
  • 音楽を楽しむ文化が育つ

という大きな価値があります。
ソーシャルダンスは資格試験ではありません。
完璧な技術を持つ人だけのものでもありません。

盆踊りに飛び込むように、まずは音楽の輪の中に入ってみる。
そんな気軽さこそが、ソーシャルダンスの本来の魅力なのかもしれません。

※そもそも、ワールドスタイルのダンスは、なんちゃって文化のダンスかもしれない。
  なので、初心者が始めやすく、覚えやすい。そして、すぐに楽しめるダンスなんです。
  どうして、難しいダンスを始めてしまい、挫折してしまうのか?
  どうしてインストラクターはすぐに楽しめるダンスを教えないのか? 難しくしてしまうのか?
  どうして、ソーシャルは、踊れる人同士で踊りたがるのか?
  すぐに輪の中に入って踊る盆踊り文化の日本人にはなじめないことが多いですね。