演歌と社交ダンスの関係とは?

日本独自に発展した「演歌で踊る文化」を徹底解説

演歌で社交ダンスを踊る――。

社交ダンスを始めたばかりの人や、海外のダンス文化を知る人にとっては、不思議に感じるかもしれません。

「なぜ演歌で踊るの?」
「演歌はどの種目で踊るの?」
「海外でも演歌で踊るの?」

実は、演歌で社交ダンスを踊る文化は、日本独自に発展したソーシャルダンス文化の一つです。

競技ダンスのルールとは少し異なり、日本のダンスホールやダンスパーティーの歴史の中で自然に生まれ、多くの愛好者に親しまれてきました。

この記事では、演歌と社交ダンスの関係について、歴史・文化・音楽・踊り方まで詳しく解説します。

演歌で社交ダンスを踊るのは日本だけ?

結論から言えば、ほぼ日本だけです。

海外では、

  • サルサにはサルサ
  • バチャータにはバチャータ
  • アルゼンチンタンゴにはアルゼンチンタンゴ
  • スイングにはスイング

というように、音楽とダンスは基本的にセットになっています。

一方、日本では昭和のダンスホール文化の中で、

  • 演歌
  • 歌謡曲
  • ポップス
  • ムード歌謡
  • 映画音楽

など、さまざまな音楽が流れていました。

そのため、

「音楽のジャンルで踊る」のではなく、「テンポやリズムに合うダンスを選ぶ」

という文化が育っていったのです。

なぜ演歌で踊れるのか

演歌には次のような特徴があります。

  • 4拍子の曲が多い
  • テンポが比較的安定している
  • メロディーがはっきりしている
  • フレーズ(音楽のまとまり)が分かりやすい

そのため、社交ダンスの多くの種目に当てはめることができます。
重要なのは、ダンサーは歌詞ではなく、拍子・テンポ・リズム・フレーズを感じながら踊るということです。
演歌だから踊れるのではなく、踊れるリズムを持った演歌が多いというのが正確な表現です。

演歌ではどの種目を踊るの?

演歌には専用のダンスがあるわけではありません。
曲のテンポやリズムによって選びます。

曲の特徴踊られることが多い種目
ゆっくりした4拍子ブルース、ルンバ
中くらいのテンポブルース、ジルバ
明るい歌謡演歌ジルバ、マンボ
3拍子の演歌ワルツ

もちろん絶対ではありません。
同じ曲でも、

  • ブルースで踊る人
  • ルンバで踊る人

がいることも珍しくありません。

ルンバで演歌を踊る人はいる?

います。特に、

  • ゆったりした演歌
  • 情感のある曲
  • 恋愛や別れを歌った曲

では、ルンバを選ぶ人も少なくありません。
ただし、これは「演歌はルンバ」という意味ではありません。
ルンバは本来ラテン音楽のダンスです。
日本では、「ルンバの表現力を演歌にも応用する」という楽しみ方が広まりました。

ワルツになる演歌もある

演歌には3拍子の曲もあります。
そのような曲では、ワルツで踊ることもあります。
また、ワルツ調にアレンジされた演歌も存在します。

つまり、演歌だからワルツではないのではなく、3拍子だからワルツなのです。

競技ダンスでも演歌を踊る?

ここは誤解されやすいところです。
競技会では、各種目専用の音楽が流れます。
そのため、演歌が流れることは通常ありません。
しかし、競技選手であっても、パーティーやダンスホールでは演歌で踊る人はいます。

つまり、

競技では踊らないが、ソーシャルダンスでは踊る、という人も少なくありません。

演歌で踊るのは高齢者だけ?

これもよくある誤解です。
確かに、現在では高齢者が中心になっている地域もあります。
しかし、もともとは昭和のダンスホール文化で幅広い年代が楽しんでいました。
現在でも、

  • ダンスホール
  • 地域のパーティー
  • 教室のパーティー
  • 温泉地のダンスイベント

などでは演歌が流れることがあります。

演歌ならではの踊り方はある?

厳密には、「演歌専用テクニック」というものはありません。
しかし、演歌特有の特徴を表現する人はいます。

例えば、

「ため」

歌い出しの直前や、フレーズの終わりにある”間”。
これに合わせて、

  • 一瞬静止する
  • 動きをゆっくり終わらせる
  • 呼吸を合わせる

などで余韻を表現します。

「情感」

演歌は感情表現が豊かな音楽です。
そのため、

  • 急がない
  • 音を最後まで使う
  • 身体を柔らかく使う

といった踊り方をする人もいます。

「こぶし」

演歌特有の歌唱法である「こぶし」を、身体でそのまま再現することはできません。
ただし、経験豊富なダンサーの中には、

  • ボディの柔らかな動き
  • 腕の流れ
  • 呼吸に合わせた余韻

によって、歌の抑揚に寄り添うような表現をする人もいます。
これは演歌専用技術ではなく、音楽表現の一つと言えます。

ダンスホールではなぜ演歌が流れるの?

理由はシンプルです。踊れる人が多いからです。

日本では、演歌は長年親しまれてきた音楽です。
そのため、参加者が楽しめるよう、演歌や歌謡曲を選曲するダンスホールもあります。
特に、地域密着型のダンスホールや昼間のパーティーでは、現在でもよく見られる光景です。

海外の人から見ると不思議?

海外のダンサーから見ると、演歌でルンバやブルースを踊ることは珍しく映る場合があります。

一方で、海外でもソーシャルダンスの現場では、必ずしも競技用の曲だけが流れるわけではありません。ポップスやジャズ、ロック、映画音楽などに合わせて踊ることもあります。

そのため、「親しみのある音楽で踊る」という考え方自体は世界各地にありますが、演歌という日本独自の音楽を社交ダンスに取り入れた文化は、日本ならではの特徴と言えるでしょう。

演歌で踊ることに賛否はある?

あります。

主な考え方は次の二つです。
「ダンスは本来の音楽で踊るべき」という考え方では、各ダンスが生まれた文化やリズムを大切にするため、演歌で踊ることに違和感を持つ人もいます。
一方で、「ソーシャルダンスは誰もが楽しむための文化」という考え方では、演歌や歌謡曲でも、リズムやテンポが合えば自由に踊ればよいという意見もあります。

どちらが正しいというものではなく、目的や場面によって考え方が異なります。

演歌と社交ダンスは、日本文化が生んだ組み合わせ

演歌と社交ダンスは、一見すると結び付きがないように思えるかもしれません。

しかし、日本では長年のダンスホール文化や地域のダンスパーティーを通じて、「親しみのある音楽で、誰もが気軽に踊る」という独自の楽しみ方が育まれてきました。

競技ダンスでは種目ごとの音楽を用いるのが基本ですが、ソーシャルダンスではテンポやリズムに合わせて自由に踊る文化も大切にされています。

演歌で踊るという習慣は、海外のスタイルをそのまま受け入れるだけではなく、日本の音楽文化と社交ダンス文化が自然に融合して生まれた、日本ならではの魅力の一つと言えるでしょう。