基本コールからローカルな技まで
ルエダ・デ・カジノとは
ルエダ・デ・カジノ(Rueda de Casino)は、1950年代後半のキューバで発展した、複数のペアが一つの円になって踊るペアダンス「カジノ」を起源とする集団形式です。
輪になったダンサーたちは、指名されたリーダー(Cantante / カンタンテ)が出す合図(Call / コール)に合わせて、全員が一斉に同じ技を踊ったり、パートナーを次々に交代したりしながら進みます。
音楽が大音量で鳴り響くクラブや野外イベントなどでは声が聞き取りにくいため、グループによっては手信号(Señas / ハンドシグナル)が補助として使われることもあります。
ルエダの技と「RuedaStandard」について
ルエダ・デ・カジノには、世界統一の「唯一の絶対的全技リスト」が存在するわけではありません。カジノはストリートや社交の場で自由に育ってきた背景があり、地域やグループ、先生によって技の呼び名や細かな足の運び、手の組み方が異なるのが自然な姿です。
一方で、国内外のソーシャルダンスの現場で共通して踊りやすくするため、Rueda.Casinoがまとめている「RuedaStandard」のように、ルエダでよく使われるフィギュアを整理・体系化する取り組みもあります。
この記事では、「これが世界中のすべての技」と断定するのではなく、ソーシャル・ルエダでよく使われる代表的な技をまとめた実用的な一覧(辞書)として構成しています。
【本編】ルエダ・デ・カジノ よく使われる技の辞書
ソーシャル・ルエダに参加する上で、多くの教室やフロアで共通して登場する代表的な技・コールの一覧です。体系的に探しやすいよう、3つの分類に整理しています。
1. 基本・頻出フィギュア(Core Moves)
ルエダの基礎となる、最も頻出度の高いステップとフィギュアです。
| コール | 読み方 | 分類 | 簡単な説明 | パートナー交換 |
| Guapea | グアペア | 基本動作 | 向かい合って前後に動く、ルエダの基本ステップ。次の指示を待つ基本位置にもなる。 | なし |
| Dile Que No | ディレ・ケ・ノ | 基本フィギュア | パートナーとの位置関係を変えながら、基本のオープンポジションなどへ戻るための代表的な動作。多くのフィギュアの終わりに使われる。 | なし |
| Dile Que Sí | ディレ・ケ・シ | 基本フィギュア | Dile Que Noの対比として使われる動き。位置関係を戻さずに向かい合うなど、グループごとの定義がある。 | なし |
| Dame (Dame Una) | ダメ | 交代 | 現在のパートナーと別れ、円の進行方向にいる次のパートナーへ移動する代表的な交代技。 | あり |
| Dame Dos | ダメ・ドス | 交代 | 通常のDameとは異なり、1人目を通過して2人先のパートナーへ移動する。 | あり |
| Dame Tres | ダメ・トレス | 交代 | 2人を通過して3人先のパートナーへ移動する交代技。 | あり |
| Dame Directo | ダメ・ディレクト | 交代 | 前振りのステップを省き、カウント1から直接的に次のパートナーへ向かう素早いDame。 | あり |
| Dame Pa’tras | ダメ・パ・トラス | 交代 | 通常のDameとは反対側のパートナーへ移動する交代コール。細かな方向や動きはグループによって異なる。 | あり |
| Dame Una Arriba | ダメ・ウナ・アリーバ | 交代 | 通常のDameとは異なる方向へ進んでパートナーを交代するコール。細部はグループによって異なる。 | あり |
| Dame Una con Una | ダメ・ウナ・コン・ウナ | 交代・手拍子 | 次のパートナーへ移動する際、指定された拍(カウント6など)で手拍子を1回入れる交代技。 | あり |
| Dame Una con Dos | ダメ・ウナ・コン・ドス | 交代・手拍子 | 次のパートナーへ移動する際、手拍子を2回入れてから迎える交代技。 | あり |
| Dos con Dos | ドス・コン・ドス | 交代・手拍子 | 2人先のパートナーへ移動し、2回の手拍子を打ってからDile Que No等へつなげる交代技。 | あり |
| Enchufla (Enchufe) | エンチューフラ | 交代・回転 | 相手と位置を入れ替えながら回転し、次のパートナーへつながる代表的な技。多くの技の起点となる。 | あり |
| Enchufla y Quédate | エンチューフラ・イ・ケダテ | 回転・保持 | Enchuflaの回転動作を行った後、パートナー交代をせずにその場に残って同じ相手と踊り続ける。 | なし |
| Exhíbela / Exhibela (Sácala) | エキシベラ | 回転 | パートナーを円の中心方向へ送り出して回転させ、自分の前を通すように動かす技。 | なし |
| Vacílala | バシララ | 回転 | リーダーが手を離し、パートナーを単独で回転させて見守る技。 | なし |
| Sombrero | ソンブレロ | フィギュア | 両手をつないだ状態から回転し、互いの頭上に帽子をかぶせるような形を作る技。 | なし |
| Adiós / Adiós con la Prima | アディオス / アディオス・コン・ラ・プリマ | 交代・回転 | パートナー交代を伴う代表的なフィギュア。回転して腕の下をくぐり抜けるなど、呼び方や短縮形にはグループによる違いがある。 | 場合による |
| Prima | プリマ | 交代・回転 | パートナーとの位置を変えながら次の展開へ移る技。Adiósとの関連が深く、地域や流派によって扱いが異なる。 | 場合による |
| Aguajea / Paseala / Adentro y Afuera | アグアヘア / パセアラ / アデントロ・イ・アフエラ | 移動・歩行 | パートナーを自分の前や横を通すように動かしながら、円の内側や外側へ移動させる基本動作。 | なし |
2. 派生・複合フィギュア(Variations & Combinations)
基本技に回転、アームワーク、音楽的なステップを組み合わせた発展的な技です。細かな動きは流派やグループによる違いが大きくなります。
| コール | 読み方 | 分類 | 簡単な説明 | パートナー交換 |
| Enchufla Doble | エンチューフラ・ドブレ | 複合交代 | Enchuflaを2回組み合わせた派生コール。細かな動作や足運びはグループによって異なる。 | あり |
| Enchufla con Mambo | エンチューフラ・コン・マンボ | 複合・演出 | Enchuflaの動作の合間にマンボステップを挿入するリズミカルな派生形。 | あり |
| Enchufla con Rumba | エンチューフラ・コン・ルンバ | 複合・演出 | Enchuflaにルンバ(グアグアンコー等)のボディムーブメントを取り入れたコール。 | あり |
| Enchufla con Vuelta | エンチューフラ・コン・ブエルタ | 複合回転 | リーダー自身もターン(Vuelta)を行いながらEnchuflaを完了させる。 | あり |
| Vacílala y Dame | バシララ・イ・ダメ | 回転・交代 | Vacílalaでパートナーを回転させている間に移動し、次の相手を迎える複合コール。 | あり |
| Sombrero Medio | ソンブレロ・メディオ | フィギュア | Sombreroの短い・派生的な形。手の動かし方や長さはグループによって異なる。 | なし |
| Adiós Doble | アディオス・ドブレ | 複合交代 | Adiósを発展させた動き。回転の回数や抜け方の細部はグループによって異なる。 | あり |
| Prima al Medio | プリマ・アル・メディオ | ポジション・交代 | Primaの動きから円の中央方向へ向かうコール。細部はグループによって異なる。 | グループによる |
| Prima y Hermana (Prima con la Hermana) | プリマ・イ・エルマーナ | 連続交代 | Primaに続けて次の相手(Hermana=姉妹)へEnchufla等をつなげる複合コール。 | あり |
| La Familia / Toda la Familia | ラ・ファミリア / トダ・ラ・ファミリア | 連続交代 | Prima(いとこ)、Hermana(姉妹)などを組み合わせ、複数の相手を連続して交代していくコール。 | あり |
| Setenta (70) | セテンタ | 複合フィギュア | 手をつないだまま回転し、腕を複雑に組み替えながら解いていく代表的な複合技。流派による差異が多い。 | なし(基本形) |
| Siete (7) | シエテ | フィギュア | パートナーを巻き込みながら回転や方向転換を組み合わせる技。地域や流派によって様々な派生形がある。 | グループによる |
| Cero (0) | セロ | フィギュア | 「0」を意味する番号系のフィギュア。細かな足運びや展開はグループによって異なる。 | 場合による |
| El Uno (1) | エル・ウノ | 複合フィギュア | Enchufla系の動きから相手と位置を変える技。手の保持や展開は流派によって異なる。 | 場合による |
| El Dos (2) | エル・ドス | 複合フィギュア | El Unoに似た展開で、手や位置を変えながら踊る発展形。細かな動きはグループによって異なる。 | 場合による |
| Kentucky | ケンタッキー | 複合フィギュア | 両手を交差させ、肘や腕を引き合わせながら回転や位置交換を行う技。交代の有無はグループによる。 | 場合による |
| Cadena / Cadeneta | カデナ / カデネタ | 連続交代 | 「鎖」の意。円の内外で互い違いに手を繋ぎ変えながら複数のパートナーを通過していくチェーン動作。 | あり |
| Cubanito / Cubanita | クバニート / クバニータ | 複合交代・回転 | Enchuflaから首の後ろに腕を回して並び、ポジションを変えながら次の相手へ移るフィギュア。 | あり |
| Patineta | パティネタ | フィギュア・足技 | 「キックスケーター」を意味する名前を持つフィギュア。足さばきを使った独特の展開がある。 | 場合による |
| Tumba Francesa | トゥンバ・フランセサ | 複合チェーン | キューバ東部の伝統文化に由来する名前を持つ、複雑なチェーン系のフィギュア。 | あり |
| Saca la Vecina | サカ・ラ・ベシーナ | 回転・交代 | 隣の女性(Vecina)を引き出して回転させる、またはパートナーとして迎え入れるコール。 | あり |
| Bótala | ボタラ | フィギュア・解除 | 「彼女を手放せ・送り出せ」の意。パートナーを外側へ送り出す、または手を離す動作。 | 場合による |
| Echeverría | エチェベリア | フィギュア | コールに合わせてステップを踏み、パートナーとの位置関係を調整しながら踊るフィギュア。 | なし / あり |
| Doble Play | ドブレ・プレイ | 複合フィギュア | 野球用語に由来する名前を持つフィギュア。連続したターンや位置交換をリズミカルに行う。 | 場合による |
| Una Media | ウナ・メディア | フィギュア | 「半分」を意味するフィギュア。方向転換や位置の切り替えを行う。 | 場合による |
| Festival | フェスティバル | 反復・演出 | 同じ動き(手拍子や足技など)を全員で複数回繰り返す、盛り上がりを作るコール。 | 技による |
| Enchufla Festival | エンチューフラ・フェスティバル | 連続交代 | Enchuflaを連続して繰り返し、パートナーを次々と交代していく展開。 | あり |
| Festival de Pelota | フェスティバル・デ・ペロタ | リズム・手拍子 | Pelotaの手拍子やスタンプを連続して反復し、円全体の一体感を高めるコール。 | なし / あり |
3. 歩行・方向・ポジション指定(Positions & Walking)
輪全体の進行方向や隊形、誰が動くかを指示するコールです。
| コール | 読み方 | 分類 | 簡単な説明 | パートナー交換 |
| Camínala / Camina / Camina la Rueda | カミナラ / カミナ | 移動・歩行 | パートナーと並んだまま、円全体が歩くように回り続ける指示。 | なし |
| Paseala Caminando | パセアラ・カミナンド | 移動・歩行 | パートナーを歩かせながら、円の進行方向に沿って連続してウォーキングを行う。 | なし |
| Paseala por Arriba | パセアラ・ポル・アリーバ | 移動・腕上げ | パートナーを歩かせながら腕を頭上へ通す、または上流方向へ移動させる歩行コール。 | なし |
| Dame un Tarro / Tarro | ダメ・ウン・タロ / タロ | 交代・歩行 | 歩くような行進(Caminamos)の流れを保ちながら、歩いて次のパートナーへ移動する交代技。 | あり |
| Al Medio / Pa’l Medio | アル・メディオ / パ・ル・メディオ | ポジション | パートナーとの対面を解き、全員が円の中央を向いてリズムを取るポジション指示。 | なし |
| Vamos Arriba / Vamos Abajo | バモス・アリーバ / バモス・アバホ | 方向指示 | 円の進む方向を指定するコール。Arribaは通常方向(反時計回り)、Abajoは逆方向(時計回り)へ進む。 | なし |
| Mujeres / Hombres | ムヘレス / オンブレス | 対象指定 | 「女性陣」「男性陣」の指定。直後の動作(ターン、中央への移動など)を行う対象を限定する。 | 指示による |
| Derecha / Izquierda | デレチャ / イスキエルダ | 方向指示 | 円の中央を向いている状態(Al Medio)などで、「右」「左」へのステップや移動を指示する。 | なし |
【別章】ローカルコール・ユニークなコール
ルエダには、地域やグループごとに独自のコールが加わっています。また、一般的な教材に収録されているものでも、通常の基本フィギュアとは少し違った名前や演出を持つコールがあります。
これらは、名前だけ知っていても実際の動きまでは分からないことがあります。実際の動作はグループや先生によって異なる場合があるため、ここでは代表例として紹介します。
| コール | 読み方 | 分類 | 名前の由来・特徴 | 簡単な説明 |
| Coca-Cola | コカ・コーラ | ローカル・回転 | 炭酸飲料ブランド | 相手を腕の中に引き込んでから回転させる技。飲む仕草の合図がつくこともある(動作の細部はグループによる)。 |
| Yoghurt / Yogurt | ヨーグルト | ローカル・演出 | 乳製品(とろみ・粘り気) | パートナーを身体の近くへ巻き込み、滑らかに外へ送り出すボディコンタクト系の動き。 |
| Panqué / Pancake | パンケ / パンケーキ | ローカル・演出 | ケーキ・パンケーキ | Yoghurtと同系統の俗語に由来する技。相手を引き寄せて裏返すようにターンさせる演出などがある。 |
| Mambo con la Vecina | マンボ・コン・ラ・ベシーナ | ローカル・演出 | 「隣の女性とのマンボ」 | 今のパートナーを保ちつつ、隣(Vecina)の人に向かってマンボステップを合わせるコミカルな技。 |
| Príncipe Bueno / Malo | プリンシペ・ブエノ / マーロ | ローカル・演出 | 「良い王子/悪い王子」 | 手に優しくキスするような仕草(良い王子)や、背中を向ける仕草(悪い王子)を行う演出コール。 |
| Juana la Cubana | フアナ・ラ・クバーナ | ローカル・演出 | 有名な曲名・人名 | 同名曲のリズムに合わせて、陽気なヒップワークやステップを誇張して踊るコール。 |
| Pedro Navaja | ペドロ・ナバハ | ローカル・演出 | 伝説的サルサ曲・人物名 | ルーベン・ブラデスの名曲にちなみ、襟を立てて忍び寄るような仕草を合わせる演出コール。 |
| Pelota (Uno / Dos / Tres) | ペロタ | リズム・手拍子 | 「ボール」・手拍子 | 床を踏み鳴らし、指定回数の手拍子(1回・2回・3回など)を一斉に打ち鳴らすリズム同期技。 |
| Una Foto | ウナ・フォト | 演出・停止 | 写真撮影 | コールされた瞬間にカメラを向けられたようにピタリと静止し、ポーズをとってから踊りに戻る。 |
| Un Fly | ウン・フライ | 演出・跳躍 | フライ・ジャンプ | 全員で一斉にジャンプし、頭上で拍手を「パンッ」と鳴らすコール。引っかけとしても使われる。 |
| Ni pa’ ti, ni pa’ mi | ニ・パ・ティ・ニ・パ・ミ | 演出・足技 | 「お前の物でも俺の物でもない」 | 交代を拒否し、向かい合って指を振りながら小刻みな足技を踏んで意地を張り合うコミカルな技。 |
知らないコールが出てきても、慌てなくて大丈夫
ルエダを踊っていると、習ったことのないローカルコールや、同じ技名なのに教わったのと違う動きに出くわすことがあります。しかし、ルエダにおいて「知らないコールが出る」のはごく自然なことであり、焦る必要はまったくありません。
その場を安全に、そして楽しく乗り切るためのポイントは以下の4つです。
- カンタンテの「言葉」だけでなく「動き」を見る カンタンテが冗談で珍しい名前を言ったり、言い間違えたりすることもあります。耳の情報だけに頼らず、カンタンテ本人のステップや体の向き、手信号(Seña)を直接見ることが一番のヒントになります。
- 迷ったら無理をせず、基本動作(Guapea)をキープする 技が分からなくなったときは、無理に腕を引っ張ったり回そうとしたりせず、腕の力を抜いて基本のGuapea(向かい合って前後にステップ)に戻りましょう。次の「Dame」や「Dile Que No」が出たタイミングで、自然に全体の流れへ合流できます。
- 安全な距離を保ち、無理に追いつこうとしない 交代のタイミングで遅れそうになったとき、無理に大股で駆け寄ろうとすると衝突の原因になります。分からないときは無理に追いつこうとせず、相手との距離を保ちながら安全な位置で基本動作に戻り、次の合図を待ちましょう。
- 音楽と動きを共有して楽しむ ルエダは競技のように決められた振付を正確に再現することだけが目的ではなく、集団で音楽と動きを共有して楽しむダンスです。間違えてしまっても、慌てずに基本動作へ戻り、次のコールに合わせれば大丈夫です。
まとめ
ルエダ・デ・カジノの魅力は、みんなで揃って踊る一体感と、ストリートダンスらしい自由な遊び心にあります。
世界統一の絶対的なリストがないからこそ、まずは本編にあるような代表的な基本技(Dame、Enchufla、Vacilala、Sombreroなど)をしっかり押さえておくことが大切です。
基本さえ身についていれば、初めて行くクラブやイベントで変わったローカルコールに出会っても、アイコンタクトを交わしながら笑顔でその場を楽しむことができるはずです。