社交ダンスでは、「踊りにくい人」と「また踊りたい人」がいます。しかし、不思議なことに、踊りにくいと言われる人ほど、自分では気付いていないことが少なくありません。
このような話をすると、
「私は何年もダンスを習っています。」
「今まで問題なく楽しく踊ってきました。」
「あなたに言われる筋合いはありません。」
という反応になることがあります。
もちろん、その気持ちも理解できます。
しかし、このテーマで考えたいのは、「上手いか下手か」ではありません。
相手がどう感じているかです。
どれだけ長く習っていても、どれだけ経験があっても、自分では気付かない癖は誰にでもあります。むしろ、長年同じ踊り方を続けているほど、それが「普通」になってしまい、自分では違和感を感じなくなることがあります。
そして、多くの人は相手に気を遣って、本当のことを言いません。
「今日はありがとうございました。」
「楽しかったです。」
とは言っても、
「少し力が強かったです。」
「ちょっと速すぎました。」
「リードが分かりませんでした。」
「難しすぎて付いていけませんでした。」
とは、ほとんど言いません。
だからこそ、自分では何も問題がないと思ってしまうのです。
この記事は、誰かを批判するためのものではありません。
誰もが持っているかもしれない「無意識の癖」に気付き、相手にとっても、自分にとっても、もっと気持ちよく踊れるようになるための記事です。
なぜ本人は気付かないのか
ダンスは、自分の感覚と相手が受ける感覚が一致しない世界です。
自分では、
・ちゃんとリードしている。
・ちゃんとフォローしている。
・普通に歩いている。
・優しく踊っている。
と思っていても、相手は、
・力が強い。
・急に動くので怖い。
・タイミングが合わない。
・引っ張られている。
・何をしたいのか分からない。
と感じていることがあります。
これは、技術の問題というより、「自分の感覚だけで判断してしまうこと」が原因です。
迷惑なリーダーによくある特徴
力が強い
本人は「しっかり伝えたい」と思っていますが、相手には「腕が痛い」「引っ張られる」と感じられることがあります。
歩幅が、大きめの場合も、同様に、強いリードに繋がってしまいます。
歩くスピードが速い
本人は音楽に乗って気持ちよく踊っているつもりでも、相手は追い付くことに必死になっています。
いきなり難しいフィガーを使う
本人は「楽しませたい」「いろいろ踊りたい」と思っていますが、初心者や慣れていない相手は混乱してしまいます。
リードを途中で変える
アドリブや思い付きで方向を変えるため、相手は最後まで判断できず、結果としてぶつかったり止まったりします。
相手を見ていない
自分のステップや進行方向ばかりに意識が向き、相手の様子を確認していません。相手は「置いていかれている」と感じます。
フロアクラフトが悪い
周囲を見ずに進んだり、大きなフィガーを使ったりして、他のカップルに迷惑を掛けることがあります。
相手のレベルを考えない
初心者にも上級者向けのルーティンを踊ろうとします。本人は親切のつもりでも、相手は不安しかありません。
間違えると相手のせいにする
「フォローが悪い」と考えがちですが、実際にはリード不足だったというケースも少なくありません。
迷惑なパートナーによくある特徴
勝手に先読みする
「この流れなら次はこれだろう」と、自分から動き始めます。その結果、本来のリードが成立しなくなります。
リードを待たずに動く
タイミングより先に動くため、リーダーは何をリードしても伝わりません。
体重を預け過ぎる
常に重く感じられ、リーダーは必要以上の力を使うことになります。
腕が硬い
情報が伝わらず、リードが途中で止まってしまいます。
腕が柔らか過ぎる
今度は逆に情報が逃げてしまい、何を伝えているのか分からなくなります。
音楽だけで踊る
リードではなく、自分のタイミングだけで踊るため、ペアダンスではなく一人で踊っている状態になります。
常に下を向いている
アイコンタクトがなく、相手とのコミュニケーションが取りにくくなります。
間違えるとリーダーのせいにする
リード不足だけでなく、自分がリードを待てていない可能性も考える必要があります。
リーダー・パートナー共通の困った癖
お礼を言わない
踊り終わっても何も言わずに去ってしまう人がいます。
「ありがとうございました。」
この一言だけで印象は大きく変わります。
表情がない
本人は真剣なだけでも、相手には怒っているように見えることがあります。
一曲終わるたびに反省会
相手は楽しく踊りたいだけなのに、毎回アドバイスや反省が始まると疲れてしまいます。
頼まれていないのに教える
本人は親切心でも、相手が求めていなければ、お節介になってしまいます。
ダメ出しばかりする
改善点だけを伝えると、「もう踊りたくない」と思われる原因になります。
他人と比較する
「あの人の方が上手い。」
「前の人はもっと踊りやすかった。」
このような比較は、相手を傷付けるだけです。
相手を試す
難しいフィガーを次々に出して、「できるかな?」と試すような踊り方は、ソーシャルダンスには向きません。
スマートフォンを優先する
誘われてもスマートフォンを見続けるなど、相手への配慮を欠く行動も印象を悪くします。
本人はどうやって知るのか
ここが最も難しいところです。
同じことが何度も起こる
・誘っても断られる。
・誰からも誘われない。
・一曲だけで終わる。
・相手の表情が固い。
・会話が続かない。
こうしたことが何度も続くなら、一度自分を振り返ってみる価値があります。
複数の人から同じことを言われる
一人だけなら相性かもしれません。
しかし、複数の人から同じ内容を言われるなら、改善すべき点である可能性が高いでしょう。
初心者の反応を見る
初心者は遠慮しながらも、表情や体の動きには本音が表れます。
怖そうにしている。
力んでいる。
困っている。
その様子は、自分の踊り方を見直す大切なヒントになります。
動画では分からないことが多い
動画を見れば姿勢や歩き方は確認できます。
しかし、
・力加減
・リードの分かりやすさ
・安心感
・踊りやすさ
といった感覚は、映像だけではほとんど分かりません。
先生だけでは分からないこともある
先生は経験豊富なので、多くのリードやフォローに対応できます。
しかし、初心者や一般のダンサーは同じようには対応できません。
先生には踊りやすくても、一般の人には踊りにくいということは十分に起こります。
信頼できる人に率直な感想を聞く
最も確実なのは、信頼できる人に感想をお願いすることです。
「踊りやすかった点を一つ。」
「改善した方がいい点を一つ。」
このように聞けば、建設的な意見をもらいやすくなります。
大切なのは、その場で言い訳や反論をしないことです。
いろいろな人と踊る
同じ相手だけでは、自分の癖は見えません。
年齢も経験も違う、多くの人と踊ることで、自分の共通した課題が見えてきます。
相手は笑顔だったかを思い出す
ソーシャルダンスでは、「自分が上手く踊れたか」よりも、
「相手が笑顔で踊れたか。」こちらの方がずっと重要です。
本当に上手い人とは
本当に上手い人は、難しいフィガーをたくさん知っている人ではありません。
初心者には初心者に合わせて踊れる。
経験者には経験者に合わせて踊れる。
相手によって力加減やスピードを変えられる。
安心感があり、「また踊りたい」と思ってもらえる。
そんな人こそ、本当に上手いダンサーです。
ソーシャルダンスは、自分一人で完成するものではありません。
相手がいて初めて成り立つダンスです。
だからこそ、「自分はどう踊れたか」ではなく、「相手はどう感じただろう」と考えることが、上達への一番の近道になります。