先生が何気なく使う言葉辞典

ダンスの先生が普段何気なく使っている言葉には、初心者にとって分かりにくいものが数多くあります。
実は、その多くは専門用語ではなく、「リードしてください」「力を抜いてください」「背筋を伸ばしてください」といった、日常でも使われる言葉です。
だからこそ、初心者は先生の説明を理解しようとして、自分が普段知っている意味で受け取ります。
そして、その解釈は決して間違っているわけではありません。
むしろ、「そう思うのが自然」と言えるものが少なくないのです。

この辞典では、先生がよく使う言葉について、

  • 先生が伝えたい本当の意味
  • 初心者が受け取りやすい意味
  • なぜ、そのように勘違いしてしまうのか

を整理しました。

初心者の勘違いは、笑われるものではありません。
真面目に理解しようとしているからこそ生まれる、ごく自然な反応です。
教える側がその気持ちを理解できれば、「そう思いますよね。」と共感しながら、本来の意味を伝えることができます。
この辞典が、初心者には「なるほど、そういう意味だったのか」という発見に、そして指導者には「こんな受け取り方をするんだ」という新たな気付きにつながれば幸いです。※
※どこまでまとめ切れているかはわかりません。ご容赦願います。ヒントとして、考えていただければと思います。

まずは、レッスンでよく出てくるものを25項目、整理してみました。

先生がよく言う言葉初心者が受け取る意味本当の意味なぜそう思うのか
リードしてください女性を引っ張る次の動きを伝える「リード=引っ張る・先導する」という日常の意味だから
フォローしてください何もしないリードを感じて反応する「フォロー=ついていく」と思うから
力を抜いて全身脱力必要以上に力まない言葉どおりに受け取るから
相手を見てずっと見つめる相手の状態を感じる「見る」を視線だけの話と思うから
ホールドしてください強く抱くフレームを保つ「Hold」の一般的な意味だから
前に出て大股で踏み出すバランスよく前進する「前へ出る」を大きく動くことだと思うから
後ろに下がって後ろへ逃げる後退のステップを踏む日常動作と同じに考えるから
自然に歩いて散歩のように歩くダンスらしい自然な歩行「自然」の意味が違うから
女性を回してください腕で回す回れる情報を伝える「回す=手で回す」と思うから
回ってくださいとにかく一回転する決められた方向・量で回る回転量の概念がないから
音楽を聴いて歌詞を聴くリズム・拍を感じる普段は音楽=歌だから
カウントしてください数字を間違えないリズムを身体に入れる数えることが目的だと思うから
軸を保って棒のように固まるバランスを保つ「軸=動かない」と思うから
背筋を伸ばして胸を反らす上に伸びる姿勢「胸を張る」と混同するから
肩の力を抜いて肩を下げる力みをなくす言葉どおりに肩を落とすから
足元を見ない一度も見てはいけない必要以上に見続けない「禁止」と受け取るから
女性についていって自分は何もしない自分も動いて反応する「ついていく」の日常感覚だから
男性を信じて全部任せるリードを信頼して反応する「信じる」の意味が広すぎるから
女性を感じて恋愛感情?重心やタイミングを感じる「感じる」の意味が曖昧だから
重心を乗せて体重を全部かけるバランスよく体重移動する「乗せる」を100%だと思うから
一歩小さく足だけ小さく出す身体全体の移動量も調整する足だけの話だと思うから
大きく踊って手足を大きく振る空間を大きく使う動きを誇張することだと思うから
スムーズにゆっくり踊る流れを止めないスムーズ=遅いではない
もっと立って背伸びする軸を上に保つ「立つ」を身長を伸ばすことと思うから
相手を感じて手だけ意識する全身の情報を受け取る接点だけを意識しやすいから

姿勢編

姿勢編は、実は初心者が最も勘違いしやすい分野です。
理由は、「姿勢」は普段の生活でも使う言葉なので、日常の意味で解釈してしまうからです。
その視点で整理してみました。

先生がよく言う言葉初心者が受け取る意味本当の意味なぜそう思うのか
背筋を伸ばして胸を大きく反らす頭頂部が上に伸びる自然な姿勢「背筋を伸ばす=胸を張る」と思うから
胸を張って軍隊のように胸を突き出す胸を潰さず自然に開く日常では「胸を張る」が誇張されるから
顎を引いて下を向く首を長く保ち、軽く引く「引く」を下げることと思うから
頭を上げて顎を上げる視線を自然に遠くへ向ける「頭を上げる」と「顎を上げる」が混同されるから
前を見て真正面だけを見る視線を安定させ、周囲も感じる「見る」が一点注視になるから
肩の力を抜いて肩をストンと落とす力みをなくして自然な位置にする「力を抜く」を形まで変えると思うから
肩を下げて無理に押し下げる力まず自然な位置を保つ「下げる」を力で押すことと思うから
肩を開いて腕を後ろへ引く胸を開き、肩甲骨を自然に使う「開く」を腕を引くことと思うから
首を長く首を伸ばそうと力む上へ伸びるイメージを持つ本当に首を伸ばそうとしてしまうから
真っすぐ立って棒のように固まるバランスよく立つ「真っすぐ=動かない」と思うから
軸を作って身体を固めるバランスの中心を保つ「軸=固定」と考えるから
軸を保って身体を動かさないバランスを崩さない「保つ」が固定すると解釈されるから
お腹を締めて息を止める・お腹をへこませる体幹を適度に使う「締める」を力いっぱいと思うから
力を入れて全身に力を入れる必要な部分だけ使う力の加減が分からないから
力を抜いて完全脱力必要以上の力を使わない言葉どおり受け取るから
膝を柔らかく常に深く曲げる衝撃を吸収できる程度に使う「柔らかく=曲げる」と思うから
膝を伸ばしてロックするまで伸ばす美しく伸ばすが固めない「伸ばす=限界まで」と思うから
立ってください背伸びする上方向へ自然に伸びる「高くなる」と思うから
身長を高く本当に背伸びする上へ伸びるイメージ言葉を文字どおり受け取るから
重心を前に前のめりになる足の上に重心を乗せる「前に行く」を身体を倒すことと思うから
重心を乗せて全体重を一気に乗せるバランスよく体重移動する「乗せる=全部かける」と思うから
足の上に乗って片足に体重を預けすぎる軸足を使って立つ「乗る」を100%と考えるから
体を起こして上半身だけ起こす全身の姿勢を整える「体=上半身」と思うから
腰を入れて腰を突き出す骨盤を安定させる「腰を入れる」の意味が曖昧だから
お尻を締めて力いっぱい締め続ける骨盤を安定させる程度に使う「締める」が力むことになるから
腕を丸く大きな円を作る自然なカーブを保つ「丸い」を形だけで考えるから
肘を上げて肘だけ持ち上げるフレーム全体を保つ部分だけを意識するから
手を軽く手を離しそうなくらい弱くする必要な接点を保つ「軽く=弱く」と思うから

一番「あるある」だと思うのは、「先生の言葉を100%実行しようとする」ことです。
初心者は「ほどよく」が分かりません。

  • 少し引く → 思い切り引く
  • 少し伸びる → 背伸びする
  • 少し力を抜く → 全部抜く
  • 少し前へ → 前のめり

つまり、初心者は「0か100」で理解しやすい。
だから先生は、「少し」「ほどよく」「イメージとして」という補足や、実演を加えるだけでも伝わりやすくなります。

リード・フォロー編

いつも言っている、「リード=情報を伝えること」という考え方があるので、「日常の意味」と「ダンスの意味」の違いが非常に出やすいです。

先生がよく言う言葉初心者が受け取る意味本当の意味なぜそう思うのか
リードしてください女性を引っ張る次の動きを伝える「リード=引っ張る・先導する」という日常の意味だから
女性を導いてください女性を連れて歩く動きを分かりやすく伝える「導く」が案内することになるから
合図を出してください声を掛ける身体を使って情報を伝える「合図=声や手」と思うから
女性を動かしてください男性が動かす女性が自分で動ける情報を伝える「動かす」を物を動かす感覚で考えるから
女性を回してください腕で回す回れるタイミング・方向を伝える「回す=手で回転させる」と思うから
リードを待ってください完全に止まる次の情報を感じ取る「待つ=何もしない」になるから
女性はついていってください自分では何もしないリードを受け、自分で動く「ついていく」が受け身だから
フォローしてください男性任せ情報を受け取って反応する「フォロー=補助する」と思うから
男性を信じてください全部任せるリードを安心して受ける「信じる」の意味が広いから
女性を感じてください恋愛感情?相手の状態や反応を感じる「感じる」が曖昧だから
男性を感じてください人柄を感じるリードの方向やタイミングを感じる日常の「感じる」と違うから
相手を感じてください手だけ意識する全身の情報を受け取る接点しか意識できないから
相手とつながって強く握る情報が伝わる状態を作る「つながる=離れない」と思うから
コネクションを作って力いっぱい押し合う適度な張りを保つコネクションの意味が分からないから
腕を使って腕だけ動かす腕も身体の一部として使う部分だけを動かそうとするから
手で教えてください手だけで操作する身体全体で情報を伝える手だけが道具になると思うから
相手を押してください強く押す必要な方向を伝える「押す」を力比べと思うから
相手を引いてください思い切り引く情報として軽く伝える引く=力を入れるだから
男性から伝えてください手だけで伝える身体全体から情報を出す接点しか見えていないから
女性は感じて動いて考えずに動く情報を判断して動く「感じる」が反射と思うから
女性は待って完全停止タイミングを待つ「待つ」の意味をそのまま受け取るから
男性は早めに伝えて早く動く少し前に情報を出す「伝える」と「動く」を混同するから
女性をエスコートして手をつないで歩く安心して踊れるよう導くエスコート=案内だから
呼吸を合わせて息を合わせる動くタイミングを合わせる呼吸を文字どおり受け取るから
タイミングを合わせて同時に足を出す音楽とリードを共有する「合わせる」の対象が分からないから
相手を待ってあげて立ち止まる相手が動ける時間を作る「待つ」が停止になるから
女性を運んで持ち上げる?女性が移動しやすい流れを作る「運ぶ」を荷物と同じに考えるから

勘違いの多くは、「ダンス用語ではなく、日常語として理解してしまうこと」から生まれています。

パーティー編

パーティー編は、「文化を知らないことによる勘違い」が多いです。
つまり、「そんなルールがあるなんて知らなかった。」というものですね。
これは初心者が非常に共感しやすいです。

先生がよく言う言葉初心者が受け取る意味本当の意味なぜそう思うのか
積極的に誘ってください全員に声を掛ける無理のない範囲で踊ってみる「積極的」が極端になりやすいから
勇気を出して誘ってみましょう断られても何度も誘う一度声を掛けてみる勇気と積極性を混同するから
気軽に踊りましょう適当に踊ればいい気負わず楽しむ「気軽」が「適当」に聞こえるから
楽しみましょう上手く踊らなくてもいいから、ふざける相手と気持ちよく踴ることを楽しむ「楽しむ」の意味が広いから
笑顔で踊りましょうずっと笑い続ける自然な表情で楽しむ「笑顔」を作ることが目的になるから
間違えても大丈夫です好き勝手に踊っていい間違いを恐れず挑戦する言葉だけ受け取るから
お礼を言いましょう深々とお辞儀する一言「ありがとうございました」で十分マナーを丁寧に考えすぎるから
一曲踊りましょう曲が終わるまで絶対踊る一曲を一緒に楽しむ「一曲」が義務になるから
フロアを見てください床を見る周囲の流れを見る「フロア」が床という意味だから
周りを見てくださいキョロキョロ見回す他のカップルとの位置関係を見る「見る」の対象が分からないから
流れに乗って踊りましょう音楽に乗ることフロアの進行方向に沿って踊る「流れ」の意味が複数あるから
譲り合いましょう止まって相手を待つお互いに進路を調整する「譲る=止まる」と思うから
空いている所へ行きましょう一番遠くまで移動する無理なく空間を使う「空いている」を探し回るから
無理しないでください踊らなくていい自分のレベルで楽しむ「無理しない」が消極的になるから
相手に合わせましょう相手の真似をするレベルや踊り方に配慮する「合わせる」がコピーになるから
会話も楽しんでください踊りながらずっと話す自然なコミュニケーションを楽しむ会話が目的になるから
音楽を楽しんでください音楽だけ聴く音楽と相手の両方を楽しむ音楽に集中しすぎるから
踊れる範囲で大丈夫です覚えている所だけ止まりながら踊る無理なく続ければよい「範囲」を限定的に考えるから
初心者同士でも踊ってください初心者だけと踊る気軽に経験を積む「同士」を限定条件と思うから
色々な人と踊りましょう全員と踊らないといけない偏らず交流してみる「色々」を全部と思うから
ダンスは会話です話しながら踊ること身体でコミュニケーションすること「会話」を言葉と思うから
相手を大切に遠慮して何もしない思いやりを持って踊る「大切」が消極的になるから
パーティーを楽しんで飲み会のように楽しむダンスを通じた交流を楽しむ「パーティー」のイメージが違うから

初心者は、「失礼があってはいけない」という気持ちがとても強いんです。
だから、

  • 丁寧すぎる
  • 遠慮しすぎる
  • 真面目すぎる
  • 全部守ろうとする

という方向に勘違いしやすい。つまり、「相手に迷惑をかけたくない」という優しさが、勘違いを生むことが多いのです。これは、とても共感しやすいテーマです。
「そんなに気を張らなくても大丈夫ですよ。」と伝えられれば、初心者は安心してパーティーを楽しめるようになります。

種目別

専門用語の勘違いが中心になります。ここで注意したいのは、「ライズ」「CBM」のような言葉は初心者はそもそも意味が分からないので、「?」になってしまうことがあります。
一方で、日常語でも使われる言葉は勘違いが起きやすく、共感も得られます。

先生がよく言う言葉初心者が受け取る意味本当の意味なぜそう思うのか
ワルツは流れるようにずっと同じ速さで歩く上下動やスイングを含めた滑らかな動き「流れる」を歩き方だけと思うから
タンゴは切れよく急に止まればよいメリハリのある動き「切れる」を停止と考えるから
クイックステップは速く全力で走る音楽に合った軽快な動き「クイック=速い」と思うから
スローはゆっくりのんびり踊るスローのリズムで踊る名前そのままに受け取るから
ルンバは歩いて普通に歩くルンバウォークで歩く「歩く」が日常の歩行だから
チャチャチャはシャープに力強く動くリズムを明確に表現する「シャープ」を力強さと思うから
サンバは弾んでジャンプするバウンスアクションを使う「弾む」が跳ねることだから
ジャイブは元気に大げさに動く軽快で自然なエネルギーを出す「元気」が誇張になるから
パソドブレは強く力いっぱい踊る力強く見える表現「強い」を力と考えるから
ボレロはゆったり止まりそうなくらい遅く滑らかな流れを作る「ゆったり」を速度と考えるから
ブルースは滑らかに足を滑らせる動きをつなげる「滑らか」を滑ることと思うから
スイングしてください身体を左右に振るスイングアクションを使う「スイング=ブランコ」のイメージだから
ライズしてください背伸びする足首・膝・身体を使って自然に上昇する「上がる=背伸び」と思うから
ロアーしてくださいしゃがむ自然に下降する「下がる」を大きく曲げると思うから
スウェイしてください身体を大きく傾けるバランスの中で生まれる傾き「傾ける」が目的になるから
ヒップを使ってお尻を振る骨盤の自然な動きを使うラテンダンスのイメージが強いから
キューバンモーションを使って腰をぐるぐる回す体重移動から自然に生まれる動き見た目だけ真似しようとするから
ボディを使って上半身だけ動かす全身を連動させる「ボディ=胴体」と思うから
足を出して足だけ動かす身体ごと移動する足だけを意識するから
音を取って音を聞くリズムに合わせて動く「取る」の意味が分からないから
一拍待って完全停止音楽のタイミングを待つ「待つ」を止まることと思うから
カウントを感じて数字を覚えるリズムを身体で感じるカウントを暗記だと思うから
フロアを大きく使って大股で移動する空間を広く表現する「大きく」が歩幅になるから
回転を止めて全く回らない必要以上に回らない「止める」をゼロと考えるから
もっと表現して大げさな顔をする音楽や種目の雰囲気を身体で表現する「表現=演技」と思うから

「勘違いの種類」

ここまで4つの表を作って、初心者の勘違いには大きく5つのパターンがあることが分かってきました。

勘違いの種類
日常語として理解するリード、ホールド、回す
言葉どおり100%実行する力を抜く、背筋を伸ばす、弾む
見た目だけ真似するヒップを使う、ライズする
専門用語が分からないスウェイ、CBM、キューバンモーション
「動き」ではなく「目的」を誤解する表現する、感じる、待つ

「この言葉はどのタイプの勘違いを生みやすいだろう」と考えられるようになると、説明の仕方や実演の工夫も自然と変わってくると思います。