ペアダンスを始めると、しばらくして不思議な経験をすることがあります。
「先生によって言うことが違う」「他の場所へ行ったら常識が違う」「同じダンスのはずなのに踊り方が違う」
「今まで正しいと思っていたことが通じない」
最初は混乱します。
しかし実は、これは珍しいことではありません。ペアダンスの世界には、初心者の頃には見えない様々な違いが存在しているからです。
そもそも何を選んでいるのか分からない
ダンスを始めようと思ったとき、多くの人はダンスについてほとんど知りません。
だから、
- SNSで見かけた
- 家から近かった
- 職場から通いやすかった
- 知人に誘われた
- 検索で上位に出てきた
という理由で参加先を決めます。これは悪いことではありません。
そもそも知らないものを比較することはできないからです。
しかし後になって気付くことがあります。
実は最初に出会った場所には独自の文化や考え方があり、それがダンス全体の常識とは限らなかったということです。
目的が違う
同じダンスでも目的が違います。
例えば社交ダンスなら、
- 競技会で勝ちたい人
- パーティーで踊りたい人
- 健康のために踊りたい人
- 発表会を楽しみたい人
がいます。
サルサでも、
- ソーシャル中心
- パフォーマンス中心
- レッスン中心
- イベント中心
などがあります。
どれも間違いではありません。ただし目指しているものが違います。
すると教え方も変わります。
上達の考え方が違う
同じ初心者向けでも考え方が違います。
ある人は、「まずステップを覚える」を重視します。
ある人は、「音楽を感じる」を重視します。
ある人は、「相手とつながる」を重視します。
ある人は、「身体の使い方」を重視します。
どれもダンスには必要です。
しかし何から始めるかが違います。
そのため習う相手によって全く違う内容になることがあります。
音楽への考え方が違う
これも意外と大きな違いです。
同じ曲が流れていても、
- ビートを重視する人
- メロディを重視する人
- 歌を重視する人
- 楽器を重視する人
がいます。
前奏で待つ人もいます。
前奏から踊る人もいます。
間奏で表現を変える人もいます。
最後の終わり方を大事にする人もいます。
初心者には見えませんが、経験者同士ではかなり意識している部分です。
リードとフォローの考え方が違う
ペアダンスで特に混乱しやすい部分です。
ある人は、「男性がしっかりリードする」と言います。
別の人は、「二人で会話するように踊る」と言います。
また別の人は、「女性も積極的に表現する」と言います。
どれも間違いではありません。
ただし、どの考え方を背景にしているかで違います。
マナーが違う
初心者が最も驚く部分かもしれません。
例えば、
- 誘い方
- 断り方
- フロアの進行方向
- 混雑時の踊り方
- 曲の途中での参加
- パートナー交代
など。場所によって慣習が違います。
ある場所では当然のことが、別の場所では失礼になることもあります。
「良いダンス」の定義が違う
実はこれが最も大きな違いです。
ある人は、「技術が高いダンス」を良いダンスだと考えます。
ある人は、「音楽に合っているダンス」を良いダンスだと考えます。
ある人は、「相手が踊りやすいダンス」を良いダンスだと考えます。
ある人は、「楽しいダンス」を良いダンスだと考えます。
評価基準そのものが違うのです。
だから、先生同士で意見が違うこともあります。
人との出会い
知人の紹介も大きな要素です。
「一緒に行こう」と言われた場所へ行く。
その結果、そのコミュニティがホームになる。これは非常によくあります。
ダンスを続ける理由が、ダンスそのものより、そこにいる人になることもあります。
逆に、最初に苦手な人に出会ってしまうと、本来好きになれたはずのダンスを辞めてしまうこともあります。
厄介な「慣れ」「癖」
最初に習ったことは強く身体に残ります。言語で言えば方言のようなものです。
後から別の考え方を知っても、「最初に習った方法」が基準になります。
そのため、
- 自分のやり方が正しいと思う
- 他の人がおかしいと思う
- 逆に自信を失う
ということが起きます。
そして最も厄介なのが、身体に残ることです。
最初に覚えた歩き方。最初に覚えた姿勢。最初に覚えたリード。最初に覚えたリズムの取り方。
これらは何百回、何千回と繰り返されます。
その結果、良い悪いではなく、「自分の普通」になります。
後から別の考え方を知った時、修正に時間がかかることがあります。
初心者は選べないガチャ要素
ここで難しい問題があります。
経験者なら習いたいダンスを判断したり比較することができます。
しかし初心者には比較材料がありません。
例えば、
- 10教室見学して比較する
- 5人の先生を受けて比較する
- 10回パーティーへ行って比較する
と言われても現実的ではありません。時間もお金もかかります。
そもそも初心者は何を比較すれば良いかも分かりません。
つまり、「比較してから決めろ」というアドバイス自体が成立しないことがあります。
実は誰もがガチャを引いている
経験者の話を聞くと、「良い先生に出会えた」「良いサークルに入れた」という話がよくあります。
裏を返せば、偶然に左右されているということです。
最初の教室。
最初の先生。
最初の仲間。
最初のパーティー。
その全てに偶然の要素があります。
多くの人は後から理由を説明しますが、実際には偶然の影響がかなり大きいのです。
だからこそ大事なのは「正解探し」ではない
初心者は、「正しい先生を探さなければ」「正しいダンスを選ばなければ」と思いがちです。
しかし実際には、最初から正解を見抜くことはほぼ不可能です。
それよりも、
- 何となく違和感がある
- 楽しくない
- 人間関係が合わない
- 目指す方向が違う
と感じたら移動してよい。この考え方の方が現実的です。
ダンスは転校が普通の世界
学校なら転校は特別なことです。しかしダンスでは、
- 教室を変える
- サークルを変える
- 複数を掛け持ちする
- 他ジャンルを体験する
ことは珍しくありません。
むしろ長く続けている人ほど、多くの場所を見ています。
最初の選択で全てを決める必要はありません。
まとめ
ダンスを始めたばかりの頃は、どこも同じように見えます。
しかし実際には、
- 目的
- 上達方法
- 音楽の捉え方
- リードとフォロー
- マナー
- 良いダンスの定義
など、多くの違いがあります。
だから後になって、「話が違う」「先生によって言うことが違う」ということが起きます。
それは誰かが間違っているからではありません。
ダンスの世界が思っている以上に多様だからです。
そして、その違いは始める前には見えなくて当たり前です。
まずは「一つのやり方がダンスの全てではない」ということを知るだけでも、後から出会う様々な違いを前向きに受け止めやすくなるのではないでしょうか。
ペアダンスの世界には、いろいろな違いというのを目にすることが多いのですが、初心者は、それらを事前に比較できないのが普通です。
なぜなら、比較するための経験も知識もまだ持っていないからです。
だから最初の選択が完璧である必要はありません。
むしろ大切なのは、「自分が今見ている世界は、ダンスの世界の一部に過ぎないかもしれない」と知っておくことです。
その視点があるだけで、ガチャの結果に振り回されすぎず、自分に合う楽しみ方を見つけやすくなります。
大切なのは最初から完璧な選択をすることではありません。
「今いる場所が自分に合っているか」を少しずつ確認しながら続けることです。
ダンスの世界は、最初に選んだ場所が全てではありません。むしろ、多くの人がガチャを引きながら、自分に合う楽しみ方を見つけていく世界なのです。